開かれた医療

開かれた医療

2026年1月13日
OPENER by JMC ブランドトコンセプト/ビジュアル

                                                                                                                                                

2013年、株式会社ジェイ・エム・シー(JMC)の医療分野向けトレーニングモデルブランドとして、「OPENER(オープナー)」のブランドコンセプト開発とコミュニケーション設計を行った。

医療現場における技能の継承は、かつて“神の手”と称される個々の熟練医師の体験知が中心だった。その閉鎖性は、技術そのものを特殊領域に閉じ込め、若手医師が標準化された手技を習得する機会を限定してしまう。人の命を救う術式のノウハウが特定の個人に留まる——その状況は、社会全体にとって喫緊の課題であった。私たちは、そうした現実を前に「医療における手技の標準化こそが、次代への開かれた道である」という視点を立てた。 

OPENERという名には、単なるブランド以上の意味が込められている。

——「開くもの」。

医療現場の閉じられたノウハウを解き放ち、技能を共有可能なものへと変換する。その志向性を、言葉として、視覚として提示することがブランド構築の本質だった。

ブランドネーミング、ロゴタイプ、商品カタログ、ウェブサイトに至るまで、私たちは一貫して「標準化された手技をあらわす装置としての存在論」を問い直した。単に機能を説明するツールではなく、専門的領域を可視化し、習熟のプロセスそのものを「開く装置」として立ち上げる。これが「OPENER」という言葉のコアである。

カタログやウェブサイトは、専門職同士の限定的なコミュニケーション媒体ではなく、知識と技能を広く共有するための“場”として設計された。製品イメージは機械的な精度を誇示するものではなく、手技の“体感”を誘発するように構成し、テキストも専門用語に留まらず、「ここで何が可能になるのか」を明瞭に語る言葉選びへと昇華した。 

このブランド設計の背景には、JMCという企業の姿勢がある。JMCは光造形や3Dプリントなどの先進技術を有し、受託開発・製造の現場で数々の専門モデルを世に出してきた。しかし、技術の蓄積は単に高精度を意味するだけではない。それをどのように人の学びに還元するか。技術を装置として捉えるのではなく、「知識を開くものへと変換する器」として位置づけることが、OPENERの思想となった。 

医療現場の技能伝承という広く深いテーマに対し、ブランドはひとつの言語となり、共有可能な視覚資産へと転換された。熟練者と学び手を隔てていた閉じた壁は、言葉と形を通じて溶け、「標準化」という原理が空間として立ち上がる。それは単なるツールの提供ではなく、学びの場・対話の起点・共有の起爆剤としての機能を果たす。

OPENER by JMCは、医療という専門領域に「開かれた場を構築する」という問いに真っ直ぐ向き合ったプロジェクトである。専門性と汎用性、閉鎖と共有、個人の技能と組織の知識——それらの対立項を一本の線で結びつけたのが、本ブランドに込められたコンセプチュアルな核である。

クライアント : 株式会社ジェイ エム シー
事業内容 : 医療モデルの受託開発・製造
ネーミング / ブランドロゴ / 商品カタログ / ブランドウェブサイト
デザイン柚山デザイン株式会社