

STIIK|ブランドコンセプト開発・プロデュース
STIIKは、日常の食卓に静かに立ち現れる道具である。
箸という、古来から日本人の身体と生活文化に根ざした道具を、いまの暮らしへと問い直すことからこのプロジェクトは始まった。

箸は単なる道具ではない。
食卓の時間を開き、人と料理、人と人を繋ぐインターフェイスである。
だが、300年以上続いた「一咫半(ひとあたはん)」という寸法は、私たちの身体の変化や暮らしの多様化と、いつの間にか距離を持つようになっていた。江戸時代に理想とされた寸法が、現代のダイニングテーブルや椅子の高さ、国際的な食習慣の変化に必ずしも最適でなくなっている──その事実を単なるデータとして受け取るのではなく、体験として問い直す必要があった。 

この問いから導き出されたのが、「26cm」という長さである。
これは、従来の基準を単に延ばしたのではない。
視覚、所作、身体のリズムが、自然に調和する寸法として、いまの人間の身体感覚に寄り添う答えとして選ばれた。
だからSTIIKは、箸でありながら、フォークやスプーンと並べても違和感のない存在として設計されている。和洋を問わず、サラダにもパスタにも、白いご飯にも寄り添う、いわば新しいカトラリーとしての箸である。 



素材には、日本の孟宗竹を選んだ。
竹は育成が早く循環する素材として、自然とわれわれの暮らしをつなぐ媒介でもある。熟練の職人は、竹を割り、時間をかけて乾燥させ、削り、塗装し、一膳一膳を手で仕上げていく。
その手の痕跡は無理に消されることなく、使う人の感覚に静かに語りかける。
素材の選択とその仕上げのプロセスは、単に機能性や耐久性を担保するだけではない。
自然との関係性を問い直し、暮らしの道具としての責任を提示する行為でもある。 
この道具は、単純なバージョンアップではない。
世界各国の料理を一日の中で横断するような現代の食文化に呼応し、箸としての身体性を失わずに、カトラリーとしての普遍性を獲得した。
STIIKは、食卓においてナイフやフォークと交わる存在として、新しい食体験の伴走者に位置づけられている。 



評価は海外からも届いた。
世界的なデザイン賞のひとつであるRed Dot Design Awardでも、機能性と落ち着いた佇まいが高く評価されていることは、世界尺度での普遍的価値の存在を示している。 
STIIKのコンセプトは、現代の食卓に浮かぶ小さな問いである。
道具とは何か。身体とは何か。素材とは何か。
答えはひとつではない。だが、STIIKはその問いを立ち上げる装置として、静かに、確実に立ち現れている。


クライアント : 有限会社Ko Design Concept
事業内容 : 生活雑貨・家具の卸・オンライン販売
ウェブサイト : STIIK
コンセプト / プロダクト / 展示ブース / ウェブサイト
プロダクトデザイン:鷲見栄児 [ Design Water ]
パッケージ・グラフィックデザイン:天野和俊デザイン事務所

