色を差す

色を差す

THE LUIGANS 事業コンセプト

                                                                                                                                                

福岡・海の中道海浜公園内に位置するリゾートホテル「THE LUIGANS(ザ・ルイガンズ)」。
海と空、そして広大な庭園に囲まれたこの場所は、宿泊、レストラン、ウェディング、イベントなど、多様な目的で利用される複合型リゾートである。

本プロジェクトは、THE LUIGANSが持つ事業とサービスの思想を整理し、
「この場所で過ごす時間に、どのような価値を与えるのか」を改めて定義するための事業コンセプト開発である。

リゾートホテルとして「のんびりできる」ことは、すでに前提条件となっている。
しかし、それだけでは選ばれ続ける理由にはならない。
沖縄に行く人は沖縄へ、海外リゾートを求める人は別の場所へ行く。
それでもなお、なぜ“海の中道”なのか。
その理由を、事業として明確にする必要があった。

THE LUIGANSが向き合っている自然環境は、極めてシンプルである。
海と空と庭。
一見すると、コンテンツが少ないようにも見える。

しかし、それは欠点ではなく、すでに完成度の高い環境であるという事実だった。
私たちは、何かを足して変えるのではなく、体験の印象そのものを見直すことにした。

ここで生まれたキーワードが、「色を差す」という考え方である。

「色を差す」とは、大きな地色の上に、ほんの少しだけ強度のある要素を与えること。
雄大な自然という変えようのない背景に対して、
料理の一皿、
過ごし方の提案、
ウェディングの演出、
人との距離感や言葉遣い。
その一つひとつが、体験の記憶に残る“差し色”となる。

この発想は、メキシコの建築家ルイス・バラガンへのオマージュでもある。
彼は、空や緑といった圧倒的な自然の中に、ピンクや黄色といった強い色彩を静かに配置した。
主張するためではなく、風景そのものをより深く感じさせるために。
THE LUIGANSにおける「色を差す」という行為もまた、自然や時間の価値を引き立てるための、意識的な介入である。

重要なのは、色を差す主体がホテル側だけではないという点だ。
同じ場所であっても、
光の入り方、風の強さ、訪れる人の気分は毎回異なる。
昨日と同じ体験は存在しない。
だからこそ、差し色も一つではなく、無数に存在する。

THE LUIGANSは、訪れる一人ひとりの時間に寄り添い、
その人の人生の中で、ふと記憶に残る“色”を持ち帰ってもらうことを目指している。
それは、日常に戻ったあとも、静かに効いてくる小さなスパイスのような存在である。

この事業コンセプトは、
万人に向けた分かりやすいリゾートを目指すのではなく、
誰かにとって確かな意味を持つ場所であることを選び取った結果である。

THE LUIGANSは、これからも変化していく。
ただし、それは派手に足し算をする変化ではない。
自然という大きな地色の上に、
静かに、誠実に、色を差し続けていくための変化である。

クライアント : 株式会社プラン ドゥ シー / THE LUIGANS
事業内容 : ホテル・ウェディング・レストラン・MICE&パーティー
事業コンセプト/コンセプトブック / コンセプトアート
デザイン:松尾由佳 [ Nica ]