

LS Catalogue for OLYMPUS カタログ
「LS Catalogue for OLYMPUS」。
記録と記憶を巡るひとつのプロダクトシリーズ——LSシリーズ。私たちはこのシリーズのカタログ構築において、ただ製品を並べるのではなく、「記録することの意味」「時間を記録し、残すことの美学」を、視覚コミュニケーションを通じて再構成した。
まず、展望したのは「音/映像/声」という不可視の時間を、紙という物質がいかに体現できるかという問いだった。記録媒体が変容を続ける時代にあって、“記録する装置”としてのLSシリーズは、かつての機械的装置以上の意味を担う。そこでカタログは、単なる仕様の羅列から脱し、装置が持つ〈時を縫いとめる〉という役割を、読者の体験として立ち上げる構成へと設計した。
展開にあたって私は、カタログを「静かな構造」として捉えた。紙面の余白、文字のリズム、写真のトーン、すべてが“余韻”を生むための条件である。製品写真はメタリックな質感を抑え、装置としてではなく、記憶の器として現れるよう調整した。白とグレーの静謐なトーンをベースに、アクセントとして深い藍を用い、無言の強さを演出した。仕様表や機能解説の部分も、機械の性能を語るためというよりも、「何を記録し、何を残すのか」という問いをそっと内包させる言葉に置き換えた。
シリーズ名“LS”が意味する「Live Sound」「Line Sight」のような拡張的な語感を帯びていることも意識した。カタログは、ユーザーが装置を前に「音を捉え、場を撮る」瞬間のポジションへと誘う。そのためには、製品以外の余白——例えば録音現場/映像現場の風景、マイクロフォンやスタジオ風景のモノクロームでの挿入——を設けることで、「記録する行為そのもの」が背景として立ち上がるように設計した。
私たちが手掛けたのは、カタログという媒体を「装置の延長」として扱うことだった。つまり、読者に製品を“知ってもらう”のではなく、読者自身が“記録する”という体験の傍に居るように感じてもらう。当時2012年という時点で、記録装置がデジタル化・多様化していく中、本カタログは「記録装置とは何か」という問いかけを残す意図もあった。そうした問いかけを、ページをめくる手の感触や余白の広がりにまで宿らせた。
カタログ発行後、シリーズは世界市場にも展開され、カタログのトーンと設計思想はブランドの国際コミュニケーションにも貢献した。私たちにとってもまた、ただの“カタログ制作”ではなく、「製品の意味を再定義する」プロジェクトとして重要な位置を占めた。記録するという行為の背景と、その装置としてのLSシリーズの価値を、視覚設計として一本の線にして引く。──これが今回の挑戦であった。













クライアント : オリンパスイメージング株式会社
事業内容 : 映像関連製品の開発・製造・販売
商品カタログ
デザイン:ドローイングアンドマニュアル株式会社

