

Kodak Mシリーズ 開発コンセプト
米国のコンパクトデジタルカメラ市場へ向け、同社が新たに導入をする商品のコンセプト開発。
「Mシリーズ」という名称からイメージしたのは、あえて“白いMサイズのTシャツ”というごく普通に、かつ自然に身につけられるベーシックな存在です。誰が使っても、日常にすっと溶け込む。そのようなカメラを目指すことで、特定の派手な機能やデザインではなく、「カメラであることの原点」を丁寧に立ち返って捉えました。
具体的には、「中くらい(Medium)」というサイズ感、「無理のない装い=“体に馴染む”」という使用感、「日常のベーシックとしての安心感・普遍性」をキーワードに設定。たとえば、カメラのサイズ、ボディの質量、操作の快適さ、そして持ち歩いたときの佇まいまでを一体として捉え直しました。Tシャツという日常着から着想を得ることで、過度に主張しないけれど「使いたくなる」佇まいを、プロダクトに宿らせています。
このコンセプトのもと、私たちはまず「誰が使っても当たり前に心地よいカメラ」というブランド・プロダクトの方向性を提案。カラーリング、素材感、形状、操作インターフェースに至る細部までを検討し、冷たいメタル感や過剰な装飾を避けることで「親しみやすさ」と「信頼感」の両立を図りました。たとえば、レンズまわりの突出具合を抑え、ボディのエッジを丸くし、手のひらに自然と置ける佇まいを追求しました。
また、米国市場という特性も踏まえ、ユーザーが「日常の瞬間を気軽に切り取る」ための導線を設計。たとえば「構えたときの安心感」「撮ったあと見返したくなる感覚」「持ち歩くためのスタイル性」を、Tシャツの“何気ない存在感”になぞらえ、カメラそのものがユーザーの生活に溶け込むことを意図しました。
プロダクトデザインは、石橋忠人氏(IDL)が担当。 私たちはそのクリエイティブパートナーとして、コンセプトブックやコールドモックアップの制作など、設計初期から実物を想定したビジュアル検証まで幅広く実施しました。モックアップでは、実際に手にとったときの質感や視覚印象を確かめ、「Tシャツのように“日常に溶け込む”」という象徴的な比喩が物理的にも実現できるよう、ボディカラーの微調整、質感の選定、アクセント処理の有無などを丁寧に詰めていきました。
結果として、「このくらいのサイズ感、このくらいの佇まい」であれば、カメラを日常に持ち出すハードルがぐっと下がる。使う人を選ばず、写真を撮ることそのものにフォーカスできる。そんなカメラとして、Mシリーズは「カメラの当たり前をアップデートする」ひとつの提案として成立しました。
このプロジェクトを通じて、私たちは「普遍的であること」の力を改めて確認しました。時代やトレンドが変わっても、日常の真ん中に居続ける道具であるためには、過剰ではなく、しかし存在感を失わず、「ごく普通にそこにある」ことが鍵となります。Mシリーズは、まさにその「ごく普通の名脇役」を目指して設計されました。











クライアント : コダック株式会社(現:コダック合同会社)
事業内容 : 印刷・フィルム事業
コンセプトブック、コールドモックアップ
プロダクトデザイン:石橋忠人 [ IDL ]

